雨音はショパン雨音はショパン「夢は叶う!!必ず叶えてみせる!!」 雨の日、君に逢いたくて車の中で曇った窓ガラスを指で辿り ながら、君を待っていた。 翔子は、N大芸術学部の2回生バンド仲間の合コンでであった。ピアノで数々のコンクールを子供の頃から、受賞してきたピアニストだった。 僕は翔子に一目惚れだった。細く長い白い指!! 色白な、ベビーフェイス!!まさに僕の好きなタイプ。 「順一!!翔子ちゃんって彼氏いるのかな?」 順一は、「何?お前翔子ちゃんに興味あるの?」と言うと、「教えてやってもいいけど、この間の金融論のノート貸してくれたら、教えてもいいよ!!」 僕は、仕方なく順一の取引に乗った。 「恭平!!彼女天才だから大変だよ!!今は彼いないみたい。ピアノが彼氏みたいな物だからさー。でも、最近まで いて、別れたらしいから、チャンスだよ!!」 僕は彼女の席に座り、無理やり彼女の連絡先を聞き出し、彼女のバイト先のパブに遊びに行く事を約束した。 彼女はお店でピアノの弾き語りのバイトをしていた。 僕は、ブルームーンと呼ばれる紫の薔薇の花束を彼女にプレゼントした。 その日は丁度今日みたいに激しい雨が降っていた。 「こんな日はショパンが似合うの。。。」 彼女はショパンを一人弾いていた。 僕は彼女のバイトの帰り、横須賀の彼女の家まで車で送った。 「このバイト好きじゃ無いの!!酔っ払いに絡まれるしね」 よく、僕にそうこぼした。 僕らは暫く付き合うのだが、彼女の気性は激しく、よく喧嘩をして、どんなきっかけだったか思い出せないが、僕らは別れた。 「ピアノが旨く弾けない。もう、死んでしまいたい!!」 天才ゆえに、脆さと危うさを持ち合わせた人だった。 あれから、何年経っただろう? 仕事の帰りに、懐かしい翔子のバイトしていたバーに立ち寄った。 お店には、ピアノは無く、 僕はお店のマスターに翔子の事を聞いてみた。 「そうですか!!お客さん知らなかったんだねー?あれから翔子ちゃんねー、仕事の帰りにお客さんの車で送ってもらって、その帰りに事故で亡くなったんだよ!!勿体なかったよねー!!」 そうか!翔子は夢を叶えられなかったんだ。 そう、今日もあの日と同じ雨が降っていた。 マスターは、何も言わずレコードでショパンをかけてくれた。 終わり。 |